この記事の著者・監修者
きたむら歯科院長：北村 篤史
院長の北村篤史です。地域医療に貢献したいと思い、海外で身につけた歯科に関する高度な知識や技術で診療を行います。
医療費控除とは何か？
医療費が高くなった時、少しでもお財布を助ける方法があるのをご存知ですか？それが「医療費控除」という制度です。医療費控除とは、その年（1/1〜12/31）に支払った医療費が一定額を超えると、所得から差し引ける制度です（＝所得控除）。結果として、所得税や翌年度の住民税が軽くなります。自費診療でも治療目的であれば対象になり得ます。
インプラント治療と医療費控除
噛む・話すなど機能回復を目的とするインプラントは、原則として対象です。診査（レントゲン・CT）、手術（埋入）、上部構造（被せ物）、薬代、必要な通院などが含まれます。
医療費控除でいくら戻る？
戻るお金の目安＝控除対象額 × 所得税率（＋翌年度の住民税も軽減）。
控除対象額＝（年間の医療費 − 保険金等の補てん） −〔10万円 または 総所得金額等の5％の小さい方〕
※上限は200万円。実際の金額は収入・扶養・他の控除で変わります。
【かんたん例】
医療費：1,500,000円／補てん：0円／総所得金額等：4,000,000円
閾値は10万円（5％＝20万円より小さい）
控除対象額＝1,500,000 − 100,000 ＝ 1,400,000円
所得税率が20％なら、所得税の軽減は 約280,000円
住民税も翌年度に 約140,000円 軽減
⇒ 合計の目安 約420,000円 程度戻る（軽くなる）
家族合算の考え方
「生計を一にする」家族（同居でなくても生活費を共通にしている関係）の医療費は合算してOKです。支払った人がまとめて申告できますが、還付効果を考えると所得の高い人に集約するのが一般的です。
コツは、家族分でも領収書の名義・日付・金額を分けて保管し、交通費の区間・運賃・日付メモも同じ台紙にまとめること。入力がスムーズになります。
高額療養費との違い
・高額療養費：健康保険の給付（保険診療の自己負担が上限を超えた分を払い戻す制度）。
・医療費控除：税金の制度（所得控除）。自由診療でも医療目的なら対象になり得ます。
インプラント治療は多くが自由診療のため、高額療養費の対象外です。一方で、医療費控除ではインプラント関連の検査・手術・上部構造・薬代・通院の公共交通費など、治療に必要な費用は原則計上可能です。
なお、高額療養費や保険金などで補てんされた金額は、医療費控除の計算から差し引く点に注意してください。
医療費控除の申請方法
領収書の収集
1年分の領収書・レシートを、月ごと／医療機関ごとにまとめて保管します。通院の交通費は「区間・運賃・日付」をメモで残しましょう（公共交通が基本）。
※領収書は提出不要ですが、5年間の保管義務があります。求められたら提示できるように。
申告書の準備
「医療費控除の明細書」を作成します。健保から届く「医療費通知」があれば転記で時短できます。医療費の合計から、保険金や高額療養費などの補てん額を差し引くのを忘れずに。会社員の方は源泉徴収票、e-Taxを使うならマイナンバーカード（またはID・パスワード）を用意します。
必要書類をそろえる
医療費控除を受けるためには、領収書の他に、医療費の内訳がわかる書類や、その年の所得証明書が必要です。
確定申告の提出
提出期間は原則2/16〜3/15です。ただし、還付申告は翌年1/1から5年以内ならいつでも提出できます。提出方法はe-Tax／税務署窓口／郵送のいずれか。申告後、還付金は後日指定口座に振り込まれます。
注意点
- 提出する書類は正確で完全である必要があります。
- 申請期限を守ることが重要です。
- もし不明な点があれば、税務署に相談することをお勧めします。
医療費控除の申請に必要な書類
レシートや領収書
医療機関で支払った事実を示す基本の証拠です。月ごと／医療機関ごとにまとめて保管しましょう。通院の交通費は領収書が出ないことが多いので、区間・運賃・日付をメモで残します。
医療費の内訳書
医療費の内訳書（医療費控除の明細書）は、治療にかかった費用の詳細を示す書類です。例えば、どのような治療を受けたか、使用した材料は何か、治療回数はいくつかなどが記載されています。
保険会社からの補償証明書
もし、治療費の一部を健康保険や生命保険でカバーした場合、その事実を示す証明書が必要です。これは、保険会社から発行されるものです。
病院からの診断書
また、治療の必要性を示すために、病院から発行された診断書があれば、より確実な申請が可能です。
源泉徴収票／本人確認書類
給与所得者は源泉徴収票を準備します（給与明細では代替できません）。マイナンバーと本人確認書類（運転免許証など）も必要です。
インプラント治療の医療費控除の対象となる条件とNG例
機能回復を目的とした治療
インプラントは、失われた歯を補うための治療です。この治療が、噛む機能の回復や全体的な口腔健康の改善を目的としている場合、医療費控除の対象となります。
保険適用外の治療も対象
自由診療でも「医療目的」であれば控除の対象です。治療計画書や医師の所見、見積・領収書の内訳を保管しておくと説明がスムーズです。
美容目的の施術は対象外
純粋に見た目を良くするためのインプラントは、控除の対象になりません。治療の主な目的が機能回復であることが重要です。
デンタルローンの利息は対象外
ローン利用時は、元金相当は医療費として計上できますが、利息・事務手数料は対象外です。年次は「金融機関が医院へ立替払いした年」で扱われる点にも注意しましょう。
通院費の扱い
公共交通機関の運賃は対象になります（区間・運賃・日付をメモ）。自家用車のガソリン代・駐車場代は原則対象外、タクシーはやむを得ない場合のみ認められます。
骨造成・静脈内鎮静など追加処置の扱い
治療上必要と医師が判断した追加処置は対象に含められます。
一方で、快適さのための任意オプション（例：個室料・リラクゼーション目的のサービス等）は対象外になりやすいため、医療上必要な処置かどうかが分かるように、見積書や領収書へ処置名と理由を明記してもらいましょう。